著者からのメッセージ Message from the Author
「学年ビリのギャルが一年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」(KADOKAWA)
著者 坪田信貴(つぼたのぶたか)
このストーリーは、元々、さやかちゃんのお母さん(ああちゃん)からのメールへの返信という形で生まれました。
さやかちゃんの妹が「明るい不登校」と呼ばれていた頃から指導をしていたのですが、いよいよ大学受験の年齢になりました。
そこで、坪田塾の現在社長を務める中野正樹が指導をさせていただくことになり、彼女は見事志望校の上智大学に合格。そして1ヶ月ほどが経ち、改めて「楽しく大学生活を送っていること、また子どもたちがみんなスクスク楽しそうに過ごしていて子育てもひと段落ついたこと、これも全て坪田先生のおかげ」とお礼のメッセージを伝えてくださいました。
そこで僕は考えました。
「確かに、さやかちゃんもまゆちゃんも、スタートは酷かったけど笑 結果的に慶應と上智か…。近くにいる人たちからしたら考えられないだろうな…」と。
では、なぜそのような成果が得られたのか、他とはなにが違うのかを考えた時に、お母さんの存在って本当に異質だったなと思ったのです。
そこで、「いや、僕のおかげとかじゃなくて、お母さんの接し方だと思います」ということを伝えるために、彼女たちとの出会いから書き始めました。
それはさやかちゃんとの出会いでした。
そこから物語が急加速して進んでいくのです。
しかし、あまりにも分量が多くなり、送信したところ、「文字数が多すぎる」とエラーメッセージが返ってきました。(当時の携帯の制約だと思います)
とはいえ、あまりにも力作すぎて「文字数を少なくする」というのはどうしても避けたかった。
そこで、僕は考えました。
ネットのブログに載せたらお母さんも読めるんじゃないか。なんなら、塾の宣伝にもなるかも。一石二鳥じゃん、と。
そこで、当時もう社会人になっていた(しかし交流は続いていた)さやかちゃんにメールを送りました。
すると、「世の中のお母さん全員読むべきだと思う!」とさやかちゃんから返事を貰い、すぐにSTORYS.JPにアップロードしました。
その後、就寝し、携帯が鳴り響き続ける音で目が覚めました。
当時、STORYS.JPは「読んでよかった」というボタンを読者が押すと、投稿者にメールが送られる仕組みになっていました。
そのメールが途切れることなく僕のスマホに届き、暗証番号を押してメールを確認しようにも、暗証番号を押す途中で次のメールが届いてやり直し…となる始末。
これはもう携帯が壊れたと思い、そのままにしました。
そしてパソコンでFacebookにログインして、「携帯が壊れたので、今日アポがある人たちはご不便をおかけします」というメッセージを投稿したところ、知人から「先生、バズってますね」と返信が来ました。
「バズってるってなんだ?」と当時はまだその用語も定着していない時だったので、「バズる」と検索したのを覚えています笑 ああ、英語のBuzzか…と納得して、僕がバズってるってどう言う意味?
と一瞬考えました。
「あ、もしかして、昨日のさやかちゃん関連の記事?」
と思ってSTORYS.JPにログインすると、既に数万人に読まれていることがわかりました。そしてリロードするたびに何百人、何千人と増えていきます。
最終的に、65万人ぐらいが読んでくれたのを確認した時点で、もうみるのをやめました。
僕は会社に行き、当時の顧問税理士だった長江先生との面談で、「今、僕、バズってるらしいです。先生、バズってご存知ですか?笑」と、最近覚えた若者言葉を使う老人のように嬉々として伝えました笑
昼頃に急展開が発生します。
ダイヤモンド社の編集者を名乗る方から書籍化しませんか?というメールが届きます。
僕の最初の感想は、「これ、ドッキリじゃない?」というものでした。
そして、次に思ったのは、「書籍化って…もう全部出し切ったからこれ以上は書けないんだけどな…」でした。
最後に、「いや、これそもそもさやかちゃんのお母さんへの返信だし、お母さんまだ読んでないし…それを書籍化って意味わからんやん」と考えました。
そして塾の仕事をしていた夕方頃、次はアスキーメディアワークス(現KADOKAWA)の編集者を名乗る人から書籍化しませんか?という熱くて長いメッセージが届きました。
他にも書籍化のお話をいただき、「訳分からん。どうもこれはドッキリではなくマジっぽい」と判断し、さやかちゃんのお母さんに電話しました。
「ご無沙汰しております。先日は素敵なメールをありがとうございました。実は、あの後すぐ返事をかきまして…で、何を言ってるか分からないとは思いますが、その返事を書籍化しないかと…いくつかの出版社から声をかけられています…本にしても良いですかね?」
今これを読むと、「意味不明」な話だけれど、事実なのです。
そしてさやかちゃんのお母さんがその時に仰った返事は「あはは。先生もう、何仰ってるんですか。おめでとうございます。本になるんですか?すごい。先生にお任せします」でした。
この返事もだいぶぶっ飛んでます。
詳細は聞かずに、「お任せします」ですからね。
「本当ですか?とりあえず編集者に会って話をしてきます。とはいえ、大変恐縮ですが、一度ブログを読んでもらっていいですか?笑」
「わかりました」
と言って、書籍化がスタートするのでした。
そこから「編集者の面接」を開始しました笑
僕の中では、「これは僕の話ではなく、ああちゃんの話であり、さやかちゃんの話であり、ご家族の話である。そしてそれを語り部として存在するのが僕の役割なのだ」と思っていたので、
どちらかというと、「変なふうに伝えられないように、自分が防波堤にならなければいけない」と思っていました。
よって、完全に、「面接」のつもりでした笑
その「面接」の中で、一番熱を感じたアスキーメディアワークスの工藤編集長(当時)を第一候補と決めました。
そしてさやかちゃんとああちゃん、お父さんに連絡。
僕の中では「お父さん」が酷い描かれ方をするのが分かっていたので、一番そこが心配でした。
するとお父さんは、「先生ご無沙汰しております。うちが今あるのは全て坪田先生のおかげなので、先生が思う通りにしてください。私がクソ親父だったのは事実なので!(笑)」とおっしゃいます。
全員が「先生にお任せします!」とのことで、始まった書籍化プロジェクト。
この時点では、その後の一大ムーブメントを誰も想像していませんでした。
そう、僕と工藤編集長を除いては…。
というわけで、「ビリギャル」というストーリーはとても興味深く、「ビリギャル」の中身はもちろんのこと、「コンテンツ化」されて世の中に広がっていく流れ自体も「ビリギャル」的な話になっていて、「フラクタル」となっています。
今やさやかちゃんはニューヨークに在住し、アイビーリーグの一つ、コロンビア大学の教育大学院で勉強しています。(2024年5月に卒業予定)
なんでも、「勉強嫌いでビリギャル だった自分がなぜ伸びたのかを科学的に証明したい」という理由でアメリカに行きました。(ちなみに、中国でも大人気で、中国版InstagramのREDでは10万人以上のフォロワーがいます)
すごい話です。
「聖徳太子」を「せいとくたこ」と呼び、「デブだったからお父さんからこんな名前つけられて…かわいそう」と言っていた高校2年生も、いまや、日本だけではなく世界に向けて発信し、活躍している。
先日、さやかちゃんのことがニュースになった時に、ある人がSNSで「ビリギャル どころか、トップギャルじゃねーか」とコメントしていたのを見て思わず笑いました。
「ホントだよなぁ」と。
結果を見ればそうかもしれませんが、どんなことでも結果を出すためには地道な努力が必要です。あらゆる「結果」は目に見えても、その過程が可視化されることはない。
だから、多くの人が「才能」とか「運」とか「DNA」とか「ジアタマ」という安易な言葉で片付けようとする。
これって、昔は「稲妻」が原理的に分からなかったので、「空で神様が喧嘩している」と思っていた…というのに近い「信仰」です。
よく分からないことは「神様」のせいにしよう、神様のおかげにしよう。
あの人は「選ばれた存在だ」と。
このビリギャル というストーリーは、なにか自分ではコントロールできないもののせいにして諦めた人たちのものではなく、「もしかして、私にもできるかも?」と一歩踏み出そうかなと悩んでいるすべての人のためのものです。
ぜひ、あなたも仲間になってみませんか?
「死ぬ気で頑張ってみた」という経験って、宝物になりますよ。