『ビリギャル』は私にとって
嘘偽りなく最高の思い出

塚田 正晃さんMASAAKI TSUKADA

ビリギャルな人たちがビリギャルを語る ビリギャルな人たちがビリギャルを語る Biligyaru people talk about birigyaru

長い出版人生、振り返ってみるとたくさんの思い出がありますが、『ビリギャル』は私にとって嘘偽りなく最高の思い出です。

さやかちゃんの当時の努力、それを見守るご家族の愛情、坪田さんの指導力と感動的なストーリーにまとめた筆力。その全てが素晴らしかったことは言うまでもありませんが、どんなに素晴らしい物語でも、それだけでは世の中に受け入れられないのが難しいところです。

出版社視点で言えば、編集はもちろん、営業も宣伝も一丸となって全力で愛を込めていかないと、なかなか読者に届いていかないものです。その上で作品が持つ運のようなものがそこに加わらないと大きなヒットにはつながらないものなのです。奇跡的にその全てが結集することでびっくりするような風が吹き始め、大きなうねりが生まれていきます。その最たるものが『ビリギャル』でした。

私は企画段階では『ビリギャル』の発行元だったアスキーメディアワークスという出版社の社長でした。が、2013年の10月に弊社も含め8つの出版社が集まり、KADOKAWAという大きな会社に生まれ変わることになりました。『ビリギャル』が発行されたのはその直後のタイミングでしたので、KADOKAWAという名前を全面的に押し出した最初の出版物になりました。

その結果、小さな出版社だったアスキーメディアワークスの小回りのきく営業・宣伝チームと、大きな出版社としてのKADOKAWAの強力な推進力、その両方を使って『ビリギャル』を世の中に浸透させていくことができました。そんなまたとないタイミングに恵まれたことも、この作品が持つ不思議な力のひとつだと思います。

私のやる気スイッチが完全にONになったのは、その少し前、編集の工藤君に石川恋さんの表紙の写真を見せられた瞬間でした。雑誌の表紙を担当していた頃、モデルの写真を選ぶ時に常に意識してきたのが目力の強さでした。さらに書店営業担当者として日本中の書店を見て来た経験が加わり、恋さんの強力な目力とメッセージ性の高い表情が、店頭で強い存在感を示し、多くの人が手に取ってくれるであろうことを確信しました。

我々の仕事はきちんと本を書店店頭に並べ、推進力を絶やさないように後ろからうちわであおぎ続けることでした。思いつく手が悉く当たり、作品の良さがきちんと伝わり、面白いように部数が伸びていきました。たくさんのメディアに取り上げていただき、映画のお話までいただけるまでになりました。いくつかの逆風も発生しましたが、自然に解決して消えて行ったのも作品が持つ不思議な力の一つだと思います。

坪田さん、さやかちゃん、編集の工藤くん、映画の主演の有村架純さん、伊藤淳史さん、土井監督をはじめ、作品に関わる全ての人が、最強の運を持ち寄ってできた、奇跡的な大ヒット作になりました。こんなに素敵で大きな作品に関わらせていただけたことは、人生最高の勲章です。ありがとうございます! 20年目に向けてまだまだ大きく育ってほしいですね。

塚田 正晃つかだ まさあき

元アスキーメディアワークス社長、KADOKAWA執行役員。
現在はKADOKAWAを退社し、複数社の顧問として若い経営者をサポートしている。

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